都市農業ビジネス考察2『都市農業と地方の大規模農業の大きな違い』

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前回は農業の特性をビジネスの観点から話しました。
 
今回はセミナーでお話しする
都市農業についてさらに絞っていきます。
(ここでの都市農業は東京都に絞って話を。
別の都市だと、また特性が違ってきます。)
 
農業の業界を調べていくうちに
地方の大規模農業と都市の農業には
大きな違いがあることが分かってきました。
 
まず日本全国の農業の経営規模を見てみます。
農水省の「平成29年度 食料・農業・農村白書」から。
 
日本の農家の年齢構造として
若手農家1割、非若手農家9割。
(※若手農家の定義は、49歳以下)
 
その若手農家の売上額の規模をみると
300万未満24.6%
300-1000万円30.2%
1000-3000万円:31.9% 
3000-5000万円:7.9%
5000万-1億円:4.1%
1億円以上:1.3%
となっていました。
 
農家さんといっても
兼業や専業、趣味程度の人
家族経営、法人経営など幅広くいます。
ここでは農業ビジネスモデルについての
考察なので売上の多い
専業農家さんを焦点に話していきます。
 
次に1人当たりの所得。
「個別経営の経営形態別経営統計」
によると(平成29年)

広い農地を持つ

専業農家だけでいうと
500~600万前半ぐらいで
多い所では農業者一人当たり
1000万円を超えるところも。
 
また農業白書によれば
1経営体当たりの農業所得は
直近5年間で最高を記録とのこと。
 
巷ではよく
「農業が今、アツイ!」
とか言われていますが
実際に農業で稼いでいる人は
増えてきているんですね。
 
収益があがった理由として
農地の集約化、技術革新による
徹底した合理化による収益化向上。
海外へ輸出額が増えたこと。
などがあるようです。
  
次に東京都における
農業の売上規模を見てみます。
東京都がだしている
「平成29年度 東京農業振興プラン」
の資料を見てみます。
 
・・・
あれ?
 
まず資料を見てみると
東京の農家の売上規模の資料が見つかりませんでした。
(農業系法人の売上モデルが5000万円と記載あるのみ)
 
目的が違うからか、もしくは
見つけられていないだけかもしれないので
それはいいんですが
東京都の目標とする
農業経営モデルを見てびっくり。
 
家族経営では3つのパターンがあり
所得1000万円、600万円、300万円に
分かれていました。
所得が1000万円の中身を見ると
いくつか経営方法があり
さらに中身を見ていくと
労働者の数が3~7人を想定。
 
ということは一人当たりの平均所得は
最高でも333万円となります。
この所得1000万円の農家の場合
東京農業をリードする専業的な経営モデルとのこと。
1人当たりの所得でみれば
専業農家の全国平均所得の半分。
稼いでいる農家さんの3分の1以下です。
 
・・・
 
ここで分かるのは
地方の大規模農業と
都市農業のビジネスモデルは
まったく違うということです。
そもそもビジネスモデルとして
成り立つのかという疑問が湧きますが・・
これだと普通のサラリーマンを
やったほうがいいってなっちゃいます・・
 
都市農業で稼ぐためには
また地方の大規模農業とは
まったく別のやり方を
考察する必要がありそうです。
 
その点については
またコラムの後半にでも触れますが
まずは
都市農業と
地方の大規模農業とは
まず何が違うのかを
明確にしなければなりません。
 
私が思うに、少なくとも3つあります。
 
1:農地が狭く、スケールメリットが活かせない
 
ご察しだと思いますが
収益を出している地方の大規模農業は
広いまとまった農地を使い
生産の効率化を行っています。
広いほどスケールメリットが活きてきます。
 
スケールメリットを活かすには
田んぼでは30ha(30町)
畑では10ha(10町)
以上ないと人的コストを
効率化できないみたいです。
 
地方の若手農家であれば
10ha以上畑を持つ割合は
70%を超えます。
 
しかし東京都の農家はだいたい
0.5ha(5000㎡、5反)
ぐらいで大きなところでも
畑は5haもありません。
 
さらに都市部の農地は
場所がバラバラに点在していて
移動や手間のコストがかります。
 
またITとの相性もあまりよくない。
事務処理としてのITは必要でも
生産方法におけるITは
小規模な面積のため
一部の農作物を除き割に合わなくなります。
 
耕地面積の違いが
都市と地方の最大の違いとなります。
 
2:都市の農地に多様な目的や機能があり制約がある
 
平成27年に
都市農業振興基本法という法律ができました。
この法律の目的は
「都市農業の多様な機能の発揮」
らしく
農作物を生産するだけでなく
 
防災機能、環境や生態系の保全
自然の景観の維持
コミュニティの場
食育、文化教育の場
 
の目的があり、
都市農地は収益性以上に
公共性を求められています。
 
また都市の土地の値段は
地方に比べてはるかに高額です。
しかし都市農地には
公共性が求められているために
農地だと固定資産税や相続税
かなり安くなります。
生産緑地法
 
ただし、それと同時に農地に対して
制約がでてきます。
法律の詳細については複雑なので
また別の機会でお伝えしますが
農地の売買、貸借
相続などの制約があります。
 
もちろん、ニーズに合わせながら
法律も変化しています。
(円滑化法)
しかし人に貸すことの不安が強く
農地を拡大していける状態でありません。
 
そしてさらに
地域住民からの臭い、騒音、虫などのクレーム
昔からの農家と新規就農者の考えのズレ
農地に関わる市民団体との関わりなど。
区画整理事業での行政との折衝
 
など地方ではあまりにない
利害関係者との問題があり
生産に特化した農業には限界があります。
 
3:人口の数が大きく違う
 
そりゃそうですね^^
これは都市農業においてはメリットです。
一般的には消費者が多いという理由ですが
別の観点からみたら
もう一つのメリットがあります。
ただ、この特性を活かしている農家さんは
少ないのかなと思います。
 
人口が多いという特性は、
また後半のコラムにて^^
 
*******
 
以上が都市農業と
大規模な地方の農業と違いでした。
 
今回もネガティブな情報が
多かった印象かもしれません・・
ただニーズと課題を明確にすることで
新しい形の都市農業のビジネスモデルが
生まれると思います。
今回、講師としてお呼びする
西田さんのやり方に
そのヒントが隠れています^^
 
【結論】
都市農業は
一般的な農業のビジネスモデルとは違う。
都市農業は別の新しいビジネスモデルを構築する必要がある。
都市の多様なニーズをどう活かすか。
 
今回は環境的な要因でしたが
次回は内的な要因からみてみます。
題して
『都市農業で儲からない5つの理由』
として1つずつ話していきます。
 
今回もお読みいただき、ありがとうございました!