バリューチェーンを意識する(思考その2)

畑会の山田です!

前回は「単価や利益率を上げる」

ことの重要性に言及しました。

とはいえ

単純に価格を上げても売れるわけではなく

それに応じた価値を提供する必要があります。

そこで、今回の2番目の思考法である

 

バリューチェーンを意識する』

 

についてお話をします。

  

バリューチェーンは経営用語で

マイケル・E・ポーターという人が

考えた枠組み(フレームワーク)です。

意味は

経営活動の業務の流れを

機能でそれぞれ分けて

その機能の価値のつながりを分析します。

分析することで

価値の向上、コスト削減ができ

結果として利益を最大化させる手法です。

 

直訳すると「価値のつながり」ですね。

今回はバリューチェーンの中にある

考えの2つのをお伝えしますね。

 

【1】価値の合計を最大化させる

 

まずはバリューチェーンを図解で示します。

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この人の本に書かれている表現だと

少し難しいので

今回の都市農業ビジネス用に

とてもシンプルに表現してみます。

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農業の機能として大まかに3つとしました。

「生産」・「販売」・「経営管理

と分けてみます。

 

「生産」の機能

→ 畑づくり、種まき、管理、収穫、出荷調整など

「販売」の機能

→ 販売活動、営業、広告宣伝、マーケティングなど

経営管理」の機能

→ 事務、各種分析、経営戦略、人脈、仕組み化など

 

と、いうようなイメージ。

 

次に

この3つの機能に経営資源を投入します。

いわゆる

「ヒト・モノ・カネ」です。

 

ここでは話を簡易化するために

「ヒト・モノ・カネ」

ひとつにまとめて10割の数値に配分します。

 

例えば

生産:販売:経営管理 = 7:2:1

経営資源を分けることをします。

一般的な農家さんだと

これぐらいの割合でしょうか。

 

ここから価値の最大値を算出します。

各機能を掛けあわせると

生産:販売:経営管理=7×2×1=14とします。

これが価値の総量とします。

当然、こんなに単純ではないですが

バリューチェーンのイメージを

してもらいたいため計算を単純化しました。

 

このバリューチェーンの考えでいくと

価値の最大化を求めるには

同じぐらいの配分で

経営資源を分けた方が最大化します。

生産:販売:経営管理=4×3×3=36

となります。

 

これだとあまりにも単純なので

更に各機能のレベルを決めます。

レベルが低ければ、どれだけ

経営資源を投資してもあまり効果を

発揮できませんので

自分がどれだけのレベルかを

把握する必要があります。

 

各機能のレベルの基準は以下のとおり。

そして、レベルの上限がある程度存在します。

(この上限もあくまでざっくりです)

 

①生産

統計資料で見る10aの農地あたりの

平均の生産量を100%とします。

その平均より多いか少ないかで%が変わります。

生産量の最大%の値は、味の質を落とさず

最大200~300%(生産量2~3倍)

ぐらいでしょうか。

 

一般的な農家さんならば

だいたい80~200%でしょうか。

 

②販売

①と同様に

市場価格を100%として

販売価格の増減によって%が変わります。

最大で500%(市場価格の5倍)ぐらいでしょうか。

 

一般的な農家さんならば

80~120%の値段で販売

しているかと思います。

 

経営管理

1人の労働生産性を100%とし

そこから

販売戦略、業務委託、組織化、システム化

ホームページやブログによる集客の仕組み化、

などで

1人当たりの労働生産が上昇します。

ここに関しては物理的制約がほとんどなく

発想によっては何百%、何千%も

価値を高めることができます。

分かりやすい例だと、法人化ですね。

一般的な農家さんは基本100%とします。

 

③、②、①の順で

価値の最大化の可能性が大きく

特に力を入れていくと

長期的には価値の最大化が図れます。

 

以上が各機能のレベルの話でした。

 

機能のレベルが決まったら

改めて、それぞれの機能の価値を掛け算します。

2つのパターンを提示します。

 

(Aパターン)

(1)経営資源の分配

生産:販売:経営管理

7  × 2  × 1      = 14

(2)各機能のレベルを追加

(7×200%)×(2×100%)×(1×100%)

14× 2  ×  1      = 28

 

(Bパターン)

(1)経営資源の分配

生産:販売:経営管理

4    ×    3   × 3  =  36

(2)各機能のレベルを追加

(4×80%)×(3×120%)×(3×150%)

生産:販売:経営管理

3.2×3.6×4.5=  51.8

 

となりました。

 

AもBも経営資源はどちらも10割

レベルの合計も300%で

持っているものは似ています。

しかし、配分が違うことで

価値の合計は2倍近くの差になりました。

 

一般的に多いのはAパターン。

生産特化型。

 

Bのパターンは、バランス型。

「生産」のレベルが低くても

「販売」「経営管理」を少しずつ高ければ

Aのベテランの農家さんよりも

収入はあがることが理論上可能です。

 

Bパターンの場合は

「販売」「経営管理」の伸びしろがまだあり

長期間で見たときにはレベルがあがり

価値がさらに向上していきます。

その間にも「生産」のレベルもあがるので

伸び率が急激に上がります。

実際に西田さんは脱サラの状態で

1.2年で利益をだすことができました。

 

Aパターンだと

「生産」のレベルの上限に限りがあり

そこにだけ注力していても全体効率が悪く

「販売」「経営管理」のレベルが上がりません。

結果、価値の伸び率は停滞することになります。

 

前回もお伝えしたように

生産量が上がっても単価を安いままだと

「生産」の機能が十分に発揮されず

収益率が低い状態が続くことが分かってしまします。

 

バリューチェーンを意識することで

これからどこに経営資源を注力すべきか

が見えてくるようになります。

 

【2】ニーズから生産を考えること

 

一般の企業では、当たり前かもしれませんが

どういった顧客に売るかを想定して

その顧客のニーズに合わせたものをつくります。

バリューチェーンを見た時に

生産から販売までつながっているため

そういった考え方が身についてきます。

しかし農家さんにはそういう考えの人が少なく

生産してからどう売っていくかを

考えられる方が多いようです。

 

それにはもちろん理由があります。

 

それは

・「農家は作ってなんぼ」という文化的歴史的な背景

・農作物の購入者はすべての人が対象のため

 ターゲットを明確にしなくても売れるといえば売れる

・小売店に卸すため顧客のイメージができない

 

バリューチェーンの意識を持つためには

やはり前回の話同様に直販がいいと思います。

直接販売を行っていくと誰に販売していくか

より明確になっていきます。

誰にとっての価値が決まっていれば

自ずと生産する品種も量もバランスもすべて

決まってきます。

(この点についてはブログの考察④を参照)

 

たまに「地域の人」「無農薬野菜を好む人」

という答えが返ってきますが

その定義だといろんな人のニーズが分かれるため

どういった農作物を届けばいいのか分かりません。

 

顧客を決めて、バリューチェーンをもとに

考えをすすめていくことをおススメします。

 

 

以上でバリューチェーンの解説を終わります。

内容が過去に投稿していた考察とも

重複する部分もありましたが

今回はより俯瞰的な見方で

お伝えさせていただきました。

 

では、次回はそのバリューチェーン

どうやって運用、活用するかについてお話いたします。

 

今回も長文をお読みいただきありがとうございました!

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都市農業で収益率をあげることの重要性(思考その1)

今までは都市農業で稼げない理由を

5つ述べてきました。

  

今回からは

都市農業のビジネスモデルについて

これまた

「稼ぐための5つの思考」と題して

話していきたいと思います。

 

今回は、一つ目の思考

それは!

【単価を上げて利益率を高める】ことです。

 

以前、お伝えした通り

地方の大規模農家が稼ぐことができるのは

大規模によるスケールメリット

よるものが大きいとお話しをしました。

 

都市農業は農地面積が狭く

地方のように稼ぐことはできません。

であれば

面積あたりの収益率をいかにあげるかを

考えていかなければなりません。

 

まず利益率を上げることが

どれだけのメリットがあるかを

お話しさせてください。

 

例えば100円の農作物を

スーパーなどで卸すとします。

その際の利益率をだしてみます。

 

2014年度の農水省の資料で

小売価格に占める生産者の受取価格の平均の割合は

45.1%となりました(調査対象16品目)。

価格が100円とした場合

100円×45.1%≒45.1円

つまり100円の野菜を売った時に

農家に入ってくる取り分は約45円となります。

そこから生産に関わる経費が

売上の2~3割ぐらいとされています。

ここでは25円とします。

そうすると

45円-25円=20円となり

 

100円の農作物を売る際に

農家に入ってくる利益は20円となり

利益率は20%になりました。

 

次にこの農作物の価格を2割増して

売り方を工夫して売れるとします。

 

そうなると

120円×45.1%≒54円

54円-25円=29円となります。

(生産に関わる経費はそのまま)

 

そうすると利益率は約30%

面白いことに価格は2割増しですが

利益率が5割増しとなりました。

 

さらに価格を5割増しの

150円として販売できたならば

利益率は40%で

最初の利益率の2倍となります。

 

次は逆に価格を2割値下げしてみます。

そうすると

80円×45.1%=36円

36円-25円=11円

となり、利益率は約10%

なんと当初の半分となってしまいます!

 

簡単な数式ですが

単価が少し変化するだけで

利益率は大幅に変化することが

お分かりになるかと思います。

 

ここで選択肢がでてきます。

利益を100万だすためには

①売上500万×利益率20%

②売上335万×利益率30%

③売上250万×利益率40%

④売上1000万×利益率10%

 

というパターンに分かれます。

①が一般的と考えた場合は

③では、生産を半分に減らしても

利益は同じになります。

④は、価格競争に巻き込まれた場合です。

生産量は①の倍。③の4倍作って

売らなければ同じように稼げません。

地方の大規模農業ならば

可能かもしれませんが

都市農業においては

そもそも農地が狭いことを考えれば

自ずと③の選択肢となります。

 

都市農業で儲からないのは

①か④のビジネスモデルに

なっているからと言えます。

 

そこで反論が来ます。

「単価をあげて収益率を上げるのは

 大事なのは分かった。

 しかし、販売をしても

 他の農家と価格が一緒になり

 価格を上げることなどできない」

 

と、言われます。

 

・・そうなんです。

小売販売をした時点で

農家には価格決定権はなく

市場価格で販売されてしまいます。

 

つまりはスーパーやJAなどに卸した時点

ビジネスモデルに限界があることが

分かってしまいます。

 

であれば、考えるべき売り方の最適解は

自ら価格を決定して売ることができる

消費者への直販が答えとなります。

 

では、今回のセミナー登壇者の西田さんは

どうやって利益率を上げているのでしょうか。

 

西田さんの場合は

HPを通して野菜セットを直接、消費者に

販売をしています。

それを基軸に加工品やオプションを入れて

単価を高くしています。

利益率は、自分の農作物を直販した場合

販売手数料、仲介手数料がかからないため

利益率は6~7割にまで跳ね上がります。

とはいえ全て、西田さんの畑だけでまかなうのは

難しいこともあり、他の農家から仕入れを行い

安定供給をしています

結果として 

西田さんの場合の利益率は50%となります。

(年間売上1200万円、利益600万円)

それでも他の農家さんに比べ

2~5倍の利益率となり

驚異の農業ビジネスモデルになっています。

 

西田さんの場合は

個人顧客への野菜セットでしたが

それ以外にも

・高級飲食店向けに単価の高い野菜提供

・収穫体験をサービスとする観光農園

・農作物の加工品に特化

・高付加価値の果物の販売

などいくつか考えられます。

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※写真はコスモファームさんの色とりどりのピクルス。

加工品も収益率を上げる方法の一つ。

 

ただ、どの場合にせよ

販売力やマーケティング、商品開発などに

力や時間を割く必要があります。

 

都市農業においては稼ぐためには

農家=生産だけではなく

販売、マーケティング経営管理などの

幅広い能力が求められています。

 

とはいえ、いきなり消費者への直販にしよう。

とは現実的に難しいのも確かです。

最初は少しずつ、売り方を変えながら

利益率の高い販売の割合を増やしていく

戦略が求められます。

この点については少しセミナーで

提案させていただければと思います。

 

なお、今回のセミナーでは

マーケティングや販売戦略などについては

少しだけ触れますが

話が多岐に渡り膨大なため

また別途、セミナーを開催予定です。

 

今回、私の方では都市農業のビジネスモデルや

経営管理について優先的にお話していきます。 

より実践的な話しは

登壇者の西田さんに聞いていただければと思います。

どうぞよろしくお願いします^^

 

以上です。

次回は2番目の思考法です!

 

今回も長文読んでいただき

ありがとうございました!

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都市農業ビジネス考察7『稼げない理由⑤コミュニケーション不足』

今回は稼げない理由の5つ目です。

 

今回も前提として

・農家さんへの批判が目的ではありません

・強調するために少し失礼な言い方かもしれません

・すべての農家さんに当てはまるわけではありません

 

どうぞご了承ください。

 

5番目の理由ですが、それは

コミュニケーション不足

になります。

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今回は今までの

1~4のまとめ的な部分になります。

 

逆を言えば

このコミュニケーション不足が

解消できれば

ある意味では1~4の解決が

よりスムーズになります^^

 

コミュニケーションを推奨することは

主に2点の理由によります

 

①直接販売で相手のニーズを満たすため

②協力者やファンを増やすため

 

それぞれ説明します。

 

①直接販売で相手のニーズを満たすため

 

稼げない理由②で

「他者に販売をゆだねている」

でもお話をしたとおり

自ら、直接販売にも力を入れることを

お伝えしました。

コミュニケーションをとることで

相手のニーズを知り

それに応じた価値を消費者に伝える

ことが可能となり

付加価値をつけて

販売する力がつくようになります。

 

結果として

稼げない理由③の

「自分のこだわりのものを作っている」

稼げない理由④の

「生産に集中しすぎている」

という点も解消できるようになります。

 

とはいえ、この場合のコミュニケーションは

直接、消費者と話すというよりも

メールやSNS、HPでのネットのやりとりが多くなります。

 

今や時代が変わり

インターネットを通して

コミュニケーションができれば

全国、世界、どこにでも

農作物を送る事は可能となりました。

 

今回、登壇者の西田さんの野菜も

沖縄から注文から頂いています。

 

②協力者やファンを増やすため

 

この点に関しては

都市農業だからこそ

できる方法かと思います。

 

考察2で伝えたとおり

都市農業の少ないメリットとして

 

人口が多いこと

 

があります。

 

消費者が多いことは当然のことですが

一緒に手伝ってくれる

援農なのでサポーターが多いのが

実は最大のメリットと考えます。

 

都市に住む人達には

自然や緑に触れることは比較的少なく

農業を無償で取り込んでくれる市民がいます。

また大学のゼミの社会活動の一環として

単位を与えて援農をするところもあります。

 

3.11の地震以降から

経済や社会のあり方の考え方が変わり

より実質経済に近い農業や

つながりを大事にする地域コミュニティ

に関わる活動が増えてきました。

 

 

その流れと都市農業の営みは

大きな親和性があります。

 

そのため、都市で農業を営む人たちは

積極的に地域の人たちとの交流し

一緒に生産活動することも

ひとつの手だと思います。

 

事例として

東京で、ある新規就農者の方がいます。

その方は、地域の人たちとの交流を重ね

多くの援農を常に受け入れています。

一般的な農家さんと違い

いかに協力者の人たちに楽しんでもらうか考え

採れたての野菜をおすそ分けすることで

毎年1000人(重複あり)近い人が

その方の畑を訪れるようにもなっています。

 

こういった事例は稀有な方ですが

地域の人たちと交流することで

また新しい都市農業のモデルを

生み出すことが可能だと感じています。

 

私たち畑会でも

消費者の方たちと交流することで

新しい都市農業の形を模索しています。

 

【結論】

既存の農家のイメージである

職人気質のあり方よりも

直接、コミュニケーションをとり

地域の人たちに開かれた

農家を目指す事の方が

都市農業ビジネスにおいては

メリットが大きい。

 

以上が

都市農業で稼げない5つの理由でした!

 

次回からは

稼げなかった原因とは逆に

どうしたら稼げるようになるかを

『都市農業で稼ぐための5つの思考』と題し

数字的な観点から探求してみます!

 

今まで読んでいただき

ありがとうございます!^^

 

やっと半分です 笑

都市農業ビジネス考察6『稼げない理由④生産に集中しすぎている』

今回は稼げない理由の4つ目です。

 

今回も前提として

・農家さんへの批判が目的ではありません

・強調するために少し失礼な言い方かもしれません

・すべての農家さんに当てはまるわけではありません

 

どうぞご了承ください。

 

4番目の理由ですが、それは

 『生産に集中しすぎている』

 です。

 

今までいろんな農家さんの話を聞きながら

余計なお世話で

たまに「こうしたらどうですか?」

みたいなアドバイスをすることがあります。

そんな時に

でてくる答えのひとつに

 

「そんな余裕はないですね」

 

と言われることがあります。

これは正直

私の伝え方やニーズや環境に

沿っていない状態での

アドバイスがゆえに

言われることもあります(汗)

 

しかし、農家側の環境そのものにも

最近は疑問を感じるようになりました。

 

多くの現場に関わらせていただき

作業の過酷さや厳しさに

お気持ちも分かるところがあります。

 

くたくたになってしまった状態で

机に向かってパソコンに

事務的な仕事をすることさえ

ままならない中で

今後の戦略や新しいことや

業務改善にまで

時間を割くというのは

なかなか難しいものがあります。

 

しかし、その環境そのものを

もう一度見直しする必要があると思っています。

 

まず目的を確認する必要があります。

 

農業ビジネスの目的は

売上をあげるのではなく

利益をあげることです。

もう少し踏み込むならば

利益率をあげるとも言えます。

 

理由1~3から

一貫して稼げない原因としてあるのは

利益率が低いことにあります。

地方の大規模農業と

同じ販売方法をしている時点で

生産量の少ない都市農業は

稼ぐことに限界があります。

結果として

「骨折り損のくたびれ儲け」

になってしまいます。

 

であれば、ここで思いっきって

やり方を変えていくことを提案します。

 

農家ではない私が言うのも

どうかと思いますが

経営的な数字の観点から

言わせていただきます。

 

私が思うに

思い切って生産量や畑の耕地面積を減らすことです。

減らすことで販売や戦略にかける割合を増やし

利益率を高めることを

最優先にすべきです。

  

勿論、畑を耕作放棄地にできないので

負担の少ない麦や手入れの少ない種類の果樹を植えることや

緑肥などをして休耕地にする必要はあると思います。

 

以前、紹介させていただいた

時給3000円の生産性で

農業を営んでいる

杉山経昌さんの場合

仕事の割合が

経営管理マーケティング:生産

4:4:2

という驚くべき割合でした。

 

もちろん、杉山さんの特性として

果樹であることや観光農園という

やり方だからとも言えますが

生産に特化することだけが

利益率の最大化にならないことの

証拠にもなるかと思います。

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また別の観点からいえば

利益率の高いビジネスモデルが

構築できれば、人を雇い

農地を拡大することも可能になります。

  

この点の具体的な考え方についても

セミナーや後半の考察で

触れてみたいと思います。

 

【結論】

利益率が上がらなければ

いったん生産を減らして

販売や戦略に労働力を費やす

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都市農業ビジネス考察5『稼げない理由③自分のこだわりのものを作っている』

理由3 自分のこだわりのものを作っている

今回で稼げない理由の3つ目です。

  

今回も前提として

・農家さんへの批判が目的ではありません

・強調するために少し失礼な言い方かもしれません

・すべての農家さんに当てはまるわけではありません

どうぞご了承ください。

 

3番目の理由ですが、それは

『自分のこだわりものを作っている』

です。

 

「こだわったものをつくっています」

というと

 

一見、良さそうな気がしますが

いったいどこに課題があるのでしょうか。

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例えば有機栽培で育てている生産者さんは

都市農業では意外に多く

農薬を使うにせよ、地方の大規模農家に比べ

農薬の量はかなり少ないところが多いです。

こういった点を

生産者のこだわりとして、よく聞きます。

※便宜上、無農薬、有機肥料

栽培する方法を有機栽培という表現にします。

 

また都市農業で有機栽培が多い背景として

・宅地の近くに畑があり住民への配慮

・都市部の生活を嫌い新しいライフスタイルの標榜

・都市の畑にコミュニティ機能の発見

などがあります。

 

有機栽培で作った農作物自体は

とてもよいものができそうですが

残念ながら、消費者は有機栽培の農作物に

あまり価値を見出していません。

 

あるアンケートでは

農作物に求める要素として

新鮮さ、味、安さ、などが上位に来ており

有機栽培の野菜のニーズはあまりありません。

  

実際に全体の農作物に対して

有機栽培の農作物の占める割合は

1%も満たしていない状態です。

 

飲食店でも同様な状態です。

オーガニックのみを扱うお店は別ですが

一般的な飲食店の方々は

農薬不使用、有機肥料かどうかよりは

美味しいか、新鮮か、地元産か

色合いなど珍しい品種か、などを

重要視しています。

 

そんな消費者ニーズの状態で

有機栽培にこだわっているといっても

ほかの慣行栽培の野菜と同じ値段で

売られてしまうようになってしまいます。

※加えて、有機農法なども

身体に危険という説も増えてきており

さらに有機農法の価値さえも下がっています。

 

もちろん、農薬や化学肥料などを

使わないことに

越したことはないですし、

同じ値段で同じ品質ならば

こだわっている作物を使うと思いますが

価格にはあまり反映されないという現実を

受け止める必要があると思います。

 

このようなミスマッチが起こる原因は

有機栽培の農作物に関わらず

視点や情報量の違いがあります。

  

生産者は常に自分達の農作物に対しての

向き合っているため

野菜の質そのもののみに視点がいきがちです。

 

かたや消費者は

生活の中で料理前提の中での野菜をみます。

クックパッドなどのレシピの情報では

野菜の質に対しては言及されていません。

テレビや本でも栄養学の情報ばかりで

野菜それぞれが持つ個性や味を知ることは少ないです。

  

そういった野菜の性質を知らない消費者に

説明不足のまま、こだわりの野菜を売っても

正直、価値をあまり見出すことができません。

 

これらの課題の対策として

大まかには3パターンあるかと思います。

 

①自分のこだわりのものを買う顧客を探す

②顧客のニーズにあった作り方、見せ方、売り方にする

③自分のこだわりの野菜の魅力を伝えて続け知ってもらう

 

例えの続きで

有機栽培の農作物を引き続き売っていくならば

 

①全体のマーケットの1%程度しかいないが

その顧客を狙った、販売宣伝のアプローチをとる

有機栽培といっても

顧客によって有機栽培の価値は違うため

見せ方、伝え方を変えていく。

子供の安全、安心を求めている人と

美容や健康を求めている人では

伝え方を変えていく必要がる。

③顧客の知らなかった有機栽培の価値を

伝えていきながら、顧客の意識や考えを

変えていく教育的アプローチを行う。

こだわっているという抽象的な言葉ではなく

具体的に言語化、数値化する。

 

  

具体的なアプローチ方法に関しては

当日のセミナーなどで

お伝えできればと思います。

ざっくりですが、まずは考え方として

知っていただければ幸いです^^

 

【結論】

こだわることはいいが

それを客観的に踏まえた上で

顧客の対象やニーズと

合せていくアプローチが必要

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都市農業ビジネス考察4『稼げない理由②他者に販売をゆだねている』

前回の続きで稼げない理由の2つめを話します。

  

今回も前提として

・農家さんへの批判が目的ではありません

・強調するために少し失礼な言い方かもしれません

・すべての農家さんに当てはまるわけではありません

 

どうぞご了承ください。

  

2番目の理由ですが、それは

『他者に販売をゆだねている』

ことがあります。

 

考察1の農業ビジネスの特性でも

少し触れましたが

農作物は常に市場の影響を受けます。

どれだけ旬でおいしいものでも

市場に同じようなものが

溢れていると安くならざるを得ません。

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わかりやすい例としては

夏の野菜の果菜類

きゅうり、ナス、ズッキーニなど。

露地栽培の場合

温度や日照時間の関係で

短期間に成長します。

数日、収穫をしないだけで

味が落ち、商品にならない場合があります。

そのため、一度に大量に収穫を行い

早めに売り切らなければなりません。

 

ただし、大量にでてきてしまうのは

他の農家さんも一緒のこと。

市場には大量の果菜類の野菜が

低価格で販売されます。

 

旬のため味も品質もいい。

大量にとれる。

しかし、低価格なため

そこまで利益がでない。

 

という農家さんにとっては

苦しい現状があります。

 

ましてや

スーパーで並んでいる野菜は

地方の大規模農家で作られた

低コストで作られた野菜。

 

そんな安売り競争の中で

都市農業の野菜を販売しようと

すること自体

収益があがらないことは

目に見えています。

 

 

またスーパーによっては

地場野菜コーナーとして

販売してくれるところもありますが

価格は地方からの農作物の価格と

あまり変わらず販売をしており

やはり安売り競争に巻き込まれています。

 

要は、安売り競争に巻き込まれずに

いかに単価が高いまま

農作物を売っていくかを

考えていく必要があります。

売り切ることが大事なのではなく

利益率が高いものを売ることが

都市農業においては

大事になっていきます。

 

都市農業は地方の大規模農家に比べ

規模の効率化をはかることができません。

都市農業で稼ぐためには

競争に巻き込まれずに

単価を高い状態で売るやり方を

模索し続けなければなりません。

 

もしくは薄利多売の覚悟で

ブラック企業並みの労働を行うか。

この場合、お金が手元に残るとしても

「骨折り損のくたびれ儲け」状態で

長期にわたって続けていくことは

不可能だと思います。

 

こんな話をすると

農家さんから

「そんなことは分かっている。

それができないから大変なんだ!」

とお叱りを受けそうな気もします(汗)

 

それも覚悟のうえで話を続けます。

私の役割はあくまで

客観的な事実を使いながら

現状と打開策を伝えていくことです。

 

ではどうすればいいか。

今回、登壇される西田さんの例をとってみましょう。

 

西田さんの場合は

野菜セットとして販売をしています。

詳しくは西田さんの農園「風来」の

ホームページをみるとよく分かります。

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この野菜セット販売のメリットとして

 

①セットや解説することで付加価値がつき

市場より高い単価で農作物が売れる

②直接販売をすることで

販売手数料や仲介料などのマージンがなくなる。

③注文してからの発送となるので

廃棄ロスが減り、出荷計画が立てやすい。

④信用やブランディングができれば

継続して高い単価で買っていただき

経営が安定し始める

 

などがあります。

 

こういった形で

人に委ねるのではなく

農家自らが販売する力を

持つことができるようになると

利益率が大幅に改善し

狭い土地でも収益性が生まれてきます。

 

もちろん、ここまで到達するのには

細かな戦略や下積みが必要ですが

目的をもってさえすれば

都市農業でも再現可能だと思います。

 

 【結論】

都市農業においては

安売り競争に巻き込まれずに

単価を高くして利益率の高い

ビジネスモデルを模索する必要がある。

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都市農業ビジネス考察3『稼げない理由①労働コストを数字として意識していない』

前回までは都市農業を含めた
ビジネスモデルや環境要因をお伝えしました。
 
今回は内的な要因である
経営視点でも話していきたいと思います。
 
今回から
「都市農業で儲からない5つの理由」と
ちょっとトゲがあるタイトルですが
ひとつずつ話してみますね。
 
ただ前提として、批判したいわけではなく
強調したいために少し失礼な言い方を
させていただきます。
どうぞご容赦くださいませm(_ _)m
 
まず1つ目ですが
「労働コストを数字として意識していない」
ということがあります。
 
これは要するに
自分の時給がいくらで
何時間労働をしようかと
意識していないということです。

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家族経営的な農業をやる場合
一般的な会社とは違い、定時出勤退社といった
決められた時間で行動することは少なく
日が昇り沈むまでという感覚に近く 
給与は完全成果主義になります。
  
完全成果主義のため
サラリーマンのように
時間で労働する必要がありません。
ある意味で楽かもしれませんが
農の活動に生産性がなければ
収益は当然ありません。
 
都市農業をビジネスとして
すすめていくならば
目標の時給と労働時間を決めて
労働生産性を高める必要があります。
  
ここで大事なのは
数値化するだけでなく
目標設定した数字と現実を比較して
日々の活動の判断や改善をすることです。
 
まず目標とする時給を算出してみてみましょう。


① 年間の目標売上と利益(年収)を決めます
② 一年で働く労働時間を決めます
③ ①で出たお給料÷②の労働時間

になります。


例えば
①売上600万、年収300万
②残業なしの一般サラリーマンと同様の場合
8時間×20日×12か月=1920時間
③300万÷1920時間≒1500円/時
 
になります。
時給だけ見ると、そこまで悪くない感じがしますね。
ただ実際に農業するにあたって
日々の農作業や活動が
1500円の時給を払えるほどの
生産性があるかとなると
都市農業では
ほとんどできていないのが現状です。
実際は、時給は半分以下ぐらいでしょう。
  
農家さんから見れば
「そんなことは分かっている。
数字の計算は机上の空論でしかない」
 
と思うかもしれません。
 
しかし、大事なのはここからです。
あくまでこれは目標であって
この目標の達成のために
どう判断して動くかが大事になってきます。
それができてビジネスとしての農業に変わります。
 
いわば時給1500円になるための
選択をするようになるのです。
ただ目標として決めるだけならば
「とらぬ狸の皮算用」になってしまいます。
  
例えば
草取りという作業をやる場合
時給1500円の仕事にあたるのか
という問いかけができます。
 
極端ですが
鎌一本持って草を刈った場合
計算するまでもなく
1500円以下の生産性であることは分かります。
つまり鎌で草取りするという選択肢が無くなります。
 
であれば別の選択肢として
・草刈り機を買って刈るのか
・誰かにやってもらうのか
・除草剤をまくのか
・防草シートを張るのか
・ある程度まで放置するのか
 
などが湧いてきます。
 
選択肢が出たならば
それぞれの場合にかかるコストを出します。
(放置の場合はコストだけでなくリスクも)
少なくてもコストが時給1500円以下ならば
もしくは
自分で鎌を使って刈るコストより低い場合
それらの選択肢を選ぶ可能性がでてきます。
 
もちろん、手持ちのお金が不足して
すぐに上記のような
選択肢ができないかもしれません。
しかし
このままでは、効率の悪いままで収益性があがらず
悪循環になってしまうことも目に見えます。
 
そのため
少しずつでもお金を工面しながら
時給以下の農作業を
自分がやらないという状態にしていきます。
短期的に見れば、利益があがらずとも
長期的にみれば、収益性があがる仕組みとなります。
 
今回は鎌で草取りという極端な例でしたが
それ以外の分かりやすい例として
注文から納品までの事務処理があります。
未だに複写の手書きでやっている所が多いですが
PCソフトやスマホのアプリを使って
一貫して自動出力できる場合もありますし
エクセルの表計算を使うだけでも
慣れてしまえば、手書きよりもはるかに
労働時間の短縮、コスト減になります。
私もいくつかの農家さんで
簡単な伝票や表計算をつくっただけでも
とても感謝されたことがあります^^
 
以上で
都市農業で儲からない5つの理由
の一つめの話を終わります。
 
さらに詳しく知りたい方は
杉山経昌さんの
『農!黄金のスモールビジネス』
という本がおすすめです^^
 
杉山さんは50歳から脱サラして
新規就農を行い、週休4日ながら
時給3000円の生産性で働いてます。
 
この杉山さんと西田さんは
都市農業で稼ぐ方法のヒントをくれてます^^

 

【結論】
目標の時給を導き出すこと。
その時給に基づき業務の選別を行い
収益性のあがる仕組みを組み立てていく。

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3月3日のセミナーでは
もう少し具体的に掘り下げてみます。
資金繰りの考え方にも触れてみますね。

次回は2つめの理由です!

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